『生きる哲学』

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読書日記

2020年03月14日

『生きる哲学』 若松英輔 文春新書 800円+税

少し前、夜中に寝ていて地震があり、枕元のラジオをつけた。地震情報を聞いてそのまま暫く「ラジオ深夜便」をつけたままにしていた。何か若そうなてきぱきと読書について話している声に気づいた。いい話をしている。名前も知らない人。うろ覚えのまま著書を買ってみようとしていて、手にいれたのがこの一冊。

ここで彼のいうは、哲学とは机上で学習するものではなく、我々が例えば人生の岐路に立った時、真剣に考え、自身を越える何者かに向かって無限に開かれていく在り方、人間を超え出るものへの真摯な憧憬であり、沈着かつ持続的な思索な意味であると。つまり生きる根底にある尽きない思索、自身を越えた生ける魂を求めることであると。

そのためには読書、つまり読むことである。読むといっても字面をなぞるのではない。読むという事は、それを通して著者との出会い、過去歴史との出会いがある。
そして言葉とは、コトバであって、話し言葉もそうであるが、自身からではなく何者かにつきすすめられて自然にでてくるものなのである。言葉の持つ意味はとても広くて大きく、深いものなのだ。字面だけ追うのは惜しい。
書くという事も同じ。言葉の営みである。
「かなし」とうコトバは、悲し、だけでなく愛し、美し、哀しなどとも書く。かなしいことがわかれば死者とも対話できると。

著者は14氏の著書などを引用しながら、生きるということを考えさせる。
須賀敦子、船越保武、原民喜、孔子、志村ふくみ、堀辰雄、リルケ、神谷美恵子、ブッダ、宮沢賢治、フランクル、辰巳芳子、美智子上皇后、井筒俊彦

このほか、もっと読まなければならない本がたくさん出てきて、本著は読書の宝庫であり、多くの出会いが愉しまれる。もっともっと読もう。
いい本は読めば読むほどしみじみと身に染みる。

 

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