『近現代史からの警告』

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読書日記

2020年09月24日

難問山積みでまたもや放り出された首相の座に自民党内のもやもやなれ合いかでこれまでの家老が新首相につき、彼と犬猿の仲と言われる不気味な都知事がグータッチなどしている図は虫唾が走る今日の日本の政界だ。そんな折、歴史からの警告は重みがあり読み応え十分。

 『近現代史からの警告』 保阪正康 講談社現代新書 900円+税

我々が知る歴史とは、とりわけ政治の歴史とは、表面に浮かび記された事項のつながりつながりである。事実か否かは判明しない。その時の社会の動きが大きく影響していることは確かだろう。
そこのところを著者は、現代史研究家として膨大な人数に直接取材し続け、それに基づき著者の視点で分析、仮説をたてて我々が忘れかけていた史実を掘り起こし明らかにしている第一人者。著述もわかりやすい。
日本史はおよそ14年周期で動いているという指摘。
明治4年を近代日本の出発とみる。この年岩倉使節団が100名で欧米視察に出かける。それを基に18年に内閣制度が発足、伊藤博文が初代首相。「近代化をめぐる14年」
その後27、28年の日清戦争勝利、33年の中国義和団の乱鎮圧で先進帝国主義国に加わり世界から一定の認知を得る。「富国強兵の14年」
35年に日英同盟締結。大正3年第一次世界大戦に参戦。「帝国主義国間の力関係に組み込まれる14年」
その16年後、昭和6年満州事変。その14年後、20年に敗戦、日本社会の瓦解。いずれも「戦争の14年」
21年から35年までは「アメリカとの政治上の関係の14年」
その後は「高度経済成長の14年」 この14年間もアメリカへの戦争であったとみる。

明治、大正、昭和の天皇の在り方と人間としての天皇の本意、特に大正天皇の漢詩などに詳しい文人として見る目が詳しく優しく感動する。
そのほか、司馬遼太郎の言う「排外主義的な地下水脈」とか、芥川龍之介が海軍機関学校で徹底して反戦を唱えていたことなど、多方面の取材やインタビュー、文献研究を共有できる一冊だ。

 

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