『天、共に在り』

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読書日記

2020年05月02日

『天、共に在り』 中村哲 NHK出版 1600円+税

著者はアフガニスタンでおよそ40年にわたり現地のために戦い続けた。そして、そこで武装集団に殺害された。本著はこうした一人の医師で、国際協力でパキスタンやアフガニスタンでの医療、特に貧困地域のライ病を看、無医村やヒマラヤ連峰2000m級の奥地に幾つもの医院を開設していく姿を記録している。
病気を治すには治療の前に先ず食を確保することが第一と分かった著者は、米軍とタリバンの攻防激化(アフガン戦争)で無差別爆撃の続く下、政情が世界でも最も不安定の下、気温40℃の下、地球温暖化のせいで今なお続く大干ばつの荒れ地や砂漠に、ヒマラヤからの雪解け水を引く幾筋もの用水路を掘削、井戸も掘り、灌漑池や給水口を浚渫して飲み水、農地の確保に邁進する。。
土木の本職ではないため一からの、そしてかつては農業国だった地元の手法、地元の人々の知恵、そして日本福岡の故郷の治水の術を学び、強いリーダーシップで格闘していく。2000本近い井戸を掘り、30kmに及ぶ用水路を拓く。
宗教、民族、部族、言語、風習の異なる人々と現地に溶け込むことによって現地の置かれた問題を肌身で知りつくし、国際的援助支援団や日本のODAなど海外支援が現地の実情に全く合っていないことを国連や日本の国会でも厳しく意見を述べた。故に日本の政府から嫌われた
彼の活動支援は、ペシャワール会という中村医師とPMS(平和医療団・日本)の現地活動を支援する会で賄っている。福岡市に事務局を置き、広報、募金活動を行っている。何十億円以上という工費などはこの会の援助だ。
彼の活動はNHKの番組でたまたま見た。焼け石に水なことをしている人だなと、その時は感じた。が、本著を読んで、物凄い信念の人であることを知った。信念ばかりでなく腕力も備えたこころ強靭な人なんだなと知った。祖父に『花と龍』のモデルで石炭の沖仲仕組合を作った男を持ち『麦と兵隊』などの著者火野葦平を伯父に持つ。
何千何万人もの現地作業員、スタッフを抱え慕われ共に仕事をして、難民として国外に逃れていた何千何万戸の所帯を救い寄せた著者だが、国情の違い民族部族の信情の違いを知り尽くしていたので、自分はここで殺害されるということを予感していたという。

 

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