『アトリエ日記』

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読書日記

2021年01月19日

『やっぱりアトリエ日記』 野見山暁治 生活の友社 2300円+税

先日、NHKテレビの「心の時代」で野見山暁治のアトリエでの筆使いを追っていた。確か100歳の絵描きとして。で、しばらく前に手に入れた90歳過ぎの頃の彼のこの本を思い出して読んだ。
彼の絵は見たことがなかったが、90歳という年齢に興味を覚えこの日記を買ったのだった。2011年4月から2013年10月まで記されている。この日記のシリーズは82歳の時から書いている。
1920年生まれの彼は、福岡県の裕福な炭鉱家に生まれ物心ついた時から地面などに落書きして遊び、生涯絵を描いて暮らすとして、東京の美大に進み直ぐに兵隊に召集され、終戦後は再び絵の勉強に戻り、フランスやスペインでの暮らしが長かった。日本に戻り、美大の教授や美術関連の仕事をしながらいまだに絵を描いている。独り身。二度結婚はしたが自由に生きたいと子供は諦めてもらったと。
この日記は単なる日記で、一日2行のときもあるが、旺盛な行動力に驚かされる。東京の自宅と九州にある夏の別荘の行き来、夫々そこでの大きなアトリエでの絵描き、その間には日本各地の美術館や美術の学校への講演出張、駅や空港などのステンドグラスの制作などなど、単なる日記と侮れない。彼のパリやスペイン時代の交友関係(今は彼しか残っていないと飄々としている)や教え子たちとの繋がりがそこいら中にちりばめられていて、彼をいまだに行動へと誘っているのが伝わってくる。
今は100歳か。絵描きは勿論、交友、行動力、そして文筆(エッセイストでもある)と、そして歳相応に医者通いもこなしている。こんな100歳、いいな。

仕事でお世話になった今年104歳になる女性が三重にいる。今は年賀状でしかやり取りはなくなったが、大きな力強い字で"歳の割には元気にしています"とあった。この方も素晴らしい人生を歩まれている。

 

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