『カラーパープル』

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読書日記

2021年08月02日

『カラーパープル』 アリス・ウォーカー 集英社文庫 710円+税

アメリカ南部の黒人社会の日常を、手紙という形式で克明に綴っている。
いまほど黒人問題が表面化する前の1983年にピュリツァー賞と全米図書賞をダブル受賞した作品。黒人の作者でしか書けない作品だ。
14歳の少女セリーが義父に犯され、子供を産み、その子たちはどこかやられ、妹ネッティーを魔の手から守り、こころの苦しみを神に手紙を出すというか語りかけるところから始まる。
20歳になってセリーは名も知らぬ男のところへ嫁がされる。 そこでも夫の暴力の下、奴隷と同じ扱い、先妻の子供たちの世話や野良仕事などなど。男は働かないものとされ、暇さえあれば女に乗っている。
ここで最愛の妹ネッティーも夫に襲われ逃れていく。妹の逃れた先はキリスト教会。そこからアフリカのエチオピアへ宣教師夫妻とセリーの子供二人を連れて行く。そこでアフリカの黒人社会に入り込む。その地は暫くするとイギリスのゴム園整備のため、大事な屋根を葺くための植物やサツマイモなどの野菜を根こそぎ薙ぎ倒して破壊されてしまう。
実はネッティーは、長年にわたりこうしたアフリカの状況をセリー宛に手紙にして送っていたのだが、セリーの夫が隠していた。それをセリーも憧れる夫の愛人で歌手のシャグの手助けでこっそり発見してからは、ネッティーの手紙が読まれる。
現在でもあまり変わっいてない、こちらの意識が。正直なところ今でも読んでいて登場人物が黒人であるということを忘れてしまう。黄色という有色人種なのに白人社会と言う現実にかなり染まってしまっているのが思い知らされる。日本人は異なった人々を知らないしだから理解もできていない。いろいろと考えさせられる。
テレビの報道で世界の人種間の暴動や今回のオリンピックの理念で知っても、心底理解はできていないのだ。 

 

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