『三つの橋を架ける』

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読書日記

2011年02月24日

『三つの橋を架ける』 加納時男著 日本電気協会新聞部 2400円+税

著者は、2期12年参議院議員を務めて2010年に引退した。元東京電力副社長。
私は著者のお陰で東京電力に就職し、以降たいへんなご指導をいただいた。
私が退職するときは、ご多用の真っ最中にもかかわらず、わざわざこの日しか空いていないと3月3日の桃の節句の日、ホテル・オークラのレストランで慰労会を持って下さった。実に心優しい方である。

本著は財界のエリートであった著者が、あえて見知らぬ政界に挑戦していった12年間の真面目でエネルギッシュな奮闘を、ご自身の身上でもある前向きでウィットに富んだ暖かい筆致で力強く綴っている。

「エネルギー政策基本法」を議員立法で成立させた立役者である。
国会での討議はエネルギー・環境分野の実業的専門的実績を生かして精力的である。
 2010年3月5日開催の参議院予算委員会の議事録が取り上げられているので抜粋してみる。
  「加納時男君」
    …ロードマップもない、国民負担額の明示もない、密室議論であって国民の理解がない。ないない尽くしの中で…。何故強引に25%削減を急ぐのか。25%の数値の根拠は。
  「内閣総理大臣鳩山由紀夫君」
    …世界の国々の背中を押そうという前提をつけてわれわれこうした考えで行動して…。われわれとして高い目標に向けて国内的に様々な推進策を作り上げていくべだと思っていて…。
  「加納時男君」
    …先日産業界の方々の大勢集まった中で意見をきいた。…環境税だ、排出量取引、固定価格買い上げだとかいろいろなものが出てくる。抗議してもせんないことならば黙って日本から去ります、と。これを聞いてわたしはぞっとしたわけです。…日本では国内産業が空洞化して失業率が増える。雇用を守る、命を守る、暮らしを守るとおっしゃるが、これと相反する悲痛な叫びをどうお聞きになるでしょうか。
  「内閣総理大臣鳩山由紀夫君」
    …私は産業界以上に国民の意識を変えたい。産業界の方はある意味で極めて大きな努力を今日までしてこられた。日本の技術が結果としてこの問題をクリアしてむしろ世界に先駆けて環境立国しいう地位を占めてゆきたい…。
  「加納時男君」
    総理はとても美しい言葉で理念を語られる私はいつも感心しているのですが…。石油危機があった…、京都議定書…、自らを律するという一つの機会として技術開発する…。言った以上はやるというのは日本の産業界の特徴なんです…。約束した目標はきちんと産業界は守っている。守っていなかったのは実は民生部門なんですね…。
    こんなことを聞くのは失礼ですけれども、再生可能エネルギー推進のための「グリーン電力基金」というのがあって毎月一口500円なのです。私は10口払っています。総理、環境大臣、ご存じですか、やっていますか、…。
 (注)総理は「勘弁!」という仕草」
  「国務大臣小沢鋭仁君」
    不勉強で存じ上げませんでした。

  「国務大臣福島みずほ君」
    存じ上げています…、すみません入ってはおりません。
   
著者らしい現実の仕事体験に即した説得力のある討論である。

先般、著者の仕事場に伺った。
相変わらずのご活躍で楽しくお話を伺った。
本著タイトルの3つの架け橋とは、「政治と経済」、「日本と世界」、「現在と未来」で、議員になるとき掲げた3つの夢だそうだ。
持ち前のガッツと明るさと感謝の気持ちでひたすら夢実現のために邁進してきたことであろう。
まだまだ一休みというわけにはいかなそうなご様子でした。

 

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