『明るいはみ出し』

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読書日記

2012年09月06日

『明るいはみ出し』 篠沢秀夫 静山社 2000円+税

副題に「ゆかい教授とはみ出し女房」とある。
かつてのテレビ番組「クイズダービー」で名を馳せたフランス文学の泰斗学習院教授篠沢秀夫氏が、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という筋肉の利かなくなる病を得て、それでも悲観していてもはじまらないと、彼の人生をドラマ化するという話しに乗って、その脚本の資料にと事細かに奥様に支えられてきた50年の人生を綴ったのがこの本である。

喉の筋肉をやられて、声帯をなくし、人工呼吸器を付けていて、筆談はできるのだそうだから、バソコンでこの原稿も打ったのだろう。他に翻訳も進めている。
明るく生きる姿に大いに学ばせて戴いた。奥様も夫君に負けず明るく天真爛漫のご様子。天性の美徳を備えたお二人だ。
90歳を過ぎて脳梗塞で倒れ要介護4になった亡母を自宅で介護していた頃のことを思い出す。
それにしても細部まで昔のことを覚えているのには驚く。記憶力抜群なのだろうがメモもしっかりと残してあるのだろう。
多くの人々との繋がりをとても大切にされている。その繋がりに感謝しながら有り難く支えられている。えらい!
フランスのそれも地方の旅もご自身が企画したりして多い
そこは本職、フランス知識を活かした、フランス文学やフランスの歴史、ワイン騎士団入会式などなどを楽しく綴っている。
それから、銘々木が320本ほどある。お世話になっている人、思い出の教え子、家族などの名前を、散歩や部屋から見た木々に付けてある。それらを就眠前に木々カウントと称して思いだしながら数える。すごい!

わっ! とか、おお、とか、えらい、とか、すごい。昔のクイズダービーでの独特の語り口、とぼけた明るさ、答えを外して愉快にわっはっはと笑う黒縁のめがね教授を見ているようで懐かしい本だ。
益々お元気にどうぞ。 

 

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