『アンナ・カレーニナ 下』

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読書日記

2016年12月13日

『アンナ・カレーニナ 下』 トルストイ 平凡社世界文学全集54 260円

この本は正に文学という名にふさわしい。文学とは、こうあるべきだ。実に読み応えがある。
昭和37年出版。上巻の翌年だ。
アンナ・カレーニナとい強烈に自我の強い女性に、滅びゆく帝政ロシアの当時の様々な分野の世相を象徴させている。農奴制、貴族社会、宮使い、戦争、農民社会、家庭、家政、恋愛、教育、宗教などなど、新しい時代に移り行く社会の、人々の、こころの葛藤を細かに描いている。
アンナ・カレーニナの独りよがりともとれる自我よりは、私は農奴制改革に目を向け始めているレーヴィン(トルストイの分身)の試行錯誤に興味をもった。農民が土地を耕すとはどういうことか。それから離れて自由になるとはどういうことか。(以降、世界各地で人は土地を離れ工業作業員となり賃金を得ていくのだ)
戦争に関しても、異教のトルコに虐げられている例えばセルビアを同胞とみなし義勇兵までも派兵している事への議論など、考えさせられる。当時と今と同じだ。日本だって、おかしな"駆け付け警護"だとか苦しいことを言っているのがまかり通っている
トルストイは、自身も広大な農地を持つ貴族だったのだが、最後に人生に疲れたのか、ふと列車に乗って家出しとある駅舎で息絶えたのである。仕舞い方を予感していたのか、予想に従ったのか。
実にいい書物だ。

 

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