『バルカンから響け ! 歓喜の歌』

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読書日記

2015年09月22日

『バルカンから響け ! 歓喜の歌』 裄V寿男 晋遊社 1600円+税

著者はバルカン室内管弦楽団音楽監督
今年4月の「三木会」(異業種交流会)のスピーカー、その話に久々に深い感銘を受けたのだった。
翌日メールでお礼を入れると直ぐに返信下さった。こんな絆は大事にしていきたいと思った。
そしてこの本を発見。早速読んだ。何と超多忙の中の細かい心配り、有り難い。

バルカンといえば、昔からヨーロッパの火薬庫といわれた。歴史で学んだ第一次大戦の導火線になったのがサラエボ事件だ。オーストリア皇太子夫妻の暗殺。
残念ながら、特にチトー死去以来、バルカン地方は今日までいっこうに内戦、民族争いなどなど戦いは収っていない。
著者がこうした地域バルカンのコソボで暮らしながら、民族を超え、国を超えた音楽を奏でたいと奮闘して出来上がったのがバルカン室内管絃楽団だ。
その過程がひょうひょうとユーモアたっぷりに書かれている。大いに危険だ。銃を持った兵士たちに囲まれながら、いざとなったら国連機関に頼るしかないたいへん危ない日常の中の、日本人一人。凄い。
著者は、旅が好き。気軽に何時間もバスに揺られ、夜行列車に揺られながら、国境を国境警備隊を越えて楽団作りに走り回る。その途中で見る軍隊、生々しい傷跡、数千の墓標などなど。日本には余り伝わってこない現代史の酷さも記憶されている
音楽は、国境を越えて人の心を一つに出来るという信念からだ。国は違えど「共に生きる」ベートーヴェン「第九」の"すべてのものは同胞になる"を歌いあげる歓喜がそこにある。
そして大切なのは、著者が日本人だからこそ、多くの民族皆から信頼を寄せられたのだ。

私は、音楽好き、旅行好き、歴史好き、読書好きな者だから、吸い込まれるように読んだ。奥の深い著書だ。  

 

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