『エーレンガート』

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読書日記

2013年07月25日

『エーレンガート』  イサク・ディーネセン (『バベットの晩餐会』に併録 ちくま文庫 680円+税) 

昨日は、英国王家ウィリアム王子の男の御子が誕生から27時間かで国民にお披露目となったニュースが日本にも届いた。
母子ともに健康。おめでたいことである。

丁度、『エーレンガート』を読み終わったところだった。
こちらも、とある北欧王家のお世継誕生の美しい物語り。何とも香しいお伽噺で、物語りを得意とする著者の遺作。
小説を読む時は、往々にして登場人物の閉じられた個体とその係わりに連れ込まれるが、物語りは、登場人物がその背後に無限に広がる世界の秘密に自由に導かれる、とはこの本の解説を書いている田中優子氏の言。
まさにその通りで、北欧の神話のヴァルキューレやオーディンを彷彿とさせ、画家としてカサノバの若き日々を登場させたり、キューピットやプシュケー、ビーナスを題材にした古典絵画が思い描かれたりと、趣き深い大人のお伽噺である。
短篇で素晴らしく読み心地のいい充実した読み物だ。

「物語り」は、時代を超え世界を超える。
 

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