『海からの贈物』

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読書日記

2017年09月09日

『海からの贈物』 リンドバーグ夫人 新潮文庫 180円

若い頃に読んだ記憶に引っ張られて書棚からまた出して読んだ。飛行士がらみだ。
著者は、大西洋横断飛行に最初に成功したリンドバーク大佐の夫人である。
何故、アン・モロー・リンドバーグとは訳さないのか。訳者吉田健一の女性への偏見か勝手か。原著はアン・モロー・リンドバーグとあるはず。
サン・テグジュペリ
と同じ頃の飛行機黎明期のヒーローたちだ。本著の中で、アンはサン・テグジュペリの言葉も引用している。
アンも米国女性初の飛行士。1930年にグライダーのライセンスを、31年にプロペラ機のライセンスを取得した。
32年、2歳にならない長男が誘拐殺害された。その後5人の子宝に恵まれる。
本著は1955年に出版、ベストセラーになる。

空想というか例えといおうか、2週間を一人で、途中で1日妹が来るが、孤島で全く一人で孤立して過ごす。全てのしがらみから解放されて
海辺で偶然見つける貝たちに、思いを寄せ、内省する。ほら貝、つめた貝、日の出貝、牡蠣、たこぶねなど。
女性は、1日でも1時間でもいいから、一人になる時間が必要だ。夫、子供、近所の付き合いなどと、仕事だけの男性よりも多くしがらみに縛られている。自立した自分一人になる自由が必要だ、と説く。

現在のように女性が職業を持っていない時代の女性の、しかも何でもこなさなければならない忙しい主婦の実情から、いわば哲学する。
世界を震撼とさせた実子誘拐殺害事件の被害者ということなどは全く窺わせない。
この事件は、アガサ・クリスティーに「オリエント急行殺人事件」を着想させた。
多分、アンは人間として実に強い精神の持ち主なのであろう。

 

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