『漢字』

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読書日記

2012年06月25日

『漢字』 白川静 岩波新書 740円+税

陶芸家の知人が、古代の文字甲骨文字などに関心を示して白川静の著書に浸っているとの便りをくれた。
私も早速白川静の著書を読んでみることにして、先ずこの『漢字』を選んだ。
副題に、"生い立ちとその背景"とある。

現代はパソコンのキーボードを叩くだけで文字が書けてしまい、どんどん肉筆で字が書けなくなっている。痛ましいほどだ。
ちょっとした葉書を書くにしても辞書を引き引きといった具合になってしまった。

この『漢字』は、今日でも使われている漢字の生い立ちを、古代社会の成り立ち、戦争、礼儀、家族関係などなどを分かり易く解きながら解説している。
なぜなら、漢字は象形文字である。
太古の昔は先ず言葉があった。言葉によって唯一のよりどころである神を造り、神事、神話ができあがった。それを口伝えだけでなく、時や事物に定着させて事実化する必要があった。ここで文字が生まれ、歴史が始まった。
神事の一番は占い(卜い)であった。雨が降るか晴れるか、象を獲るか…、など、占いの文字が獣骨や亀の腹甲に刻されているのが発掘されている。いわゆる甲骨文字である。雨はまさに天からしずくが降ってくる様、象はまさに長い鼻をつけている。象は当時野生していて、江南には六朝のころ群棲地があった。
風はすべてを規定した。風のそよぎで神との交通を求めた。ひとは風土で生まれ与えられ、風俗に従った。風紀、風貌、風格など、個人的な人格すらも風に拠った。

時が経つと、多くの文字が出来上がり、元々の意味から少し離れて音声が同じものを引用して使うようにもなってきた。
こうして出来上がっている漢字から、当時の社会的家族的なことを解き明かすことができるのは実に面白い。
嫁ぐとか、産むとか、名を付けるなどそれぞれ昔の文字を解き明かしていて、興味は尽きない。

漢字には、その一字一画、へんやつくりに意味がある。
古代の象形文字が今日にまで残って使われているのは漢字のみ

エジプトのヒエログラフも典型的な象形文字だが使われていない。
本家本元の中国ではますます略字化されているし、韓国は違う文字を開発した。台湾ではいまだ古い漢字を見かける。
日本は漢字が残っているが、読み書きできなくなりやしまいか。
漢字にもっと大事にして親しみたくなってきた。

 

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