『蘭学事始』

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読書日記

2019年11月04日

九十九里の秋の夜長、ケーブルテレビや衛星放送はないので、専ら亡父や亡母の本棚から昔の本を引っ張り出して楽しんでいる。
亡父は田舎教師をしていて、戦中の知人が戦後ある出版社の顧問か何かについたのが縁で、「世界教養全集」、「世界文学全集」、「世界大百科事典」、などなどその蔵書は半端でない。
それを気の向いたものを読んでみる。今回は昔からよく読んだ「世界教養全集」の17巻目の中の『蘭学事始』。

『蘭学事始』 杉田玄白 平凡社「世界教養全集17」 350円(1963.7.31)
 

誰でも知っていようが読んだことがあるか。今回初めてで、実に愉しく読んだ。江戸時代、医師杉田玄白が初めて目にする従って読めもしないオランダ文字25字からオランダ語を読み明かしていく、その蘭学発達の回想録である。書いたのは1815年(文化12年)の事で玄白83歳のときである。85歳で亡くなる。その時まですべてが初めてだった事を書き記しておくのも後々何かの役に立つであろうと。
当然一人で手掛けたのではなく、その意志の並々ならぬ強い同志らと共に『ターヘル・アナトミア』の翻訳に取り掛かる。1771年(明和8年)の事、玄白39歳の時である。1日で一行だけの推察しかならぬこともあった。本業の医師の仕事もある。そうして4年かけて完成したのが『解体新書』なのだ。
平賀源内ら
多くの人との交流が主に書かれていて、それがすべて初めての事と記されていて、江戸、長崎、そして仕えている各藩のことなど、平易で読み物として面白い。
緒方富雄の現代文訳だからだ。この緒方、いずれ緒方洪庵の家系か、とすると、先日他界された国連高等弁務官だった緒方貞子さんとの縁もあろうか。貞子さんは犬養毅のひ孫であるから嫁入りだわね。

古典をこれほど身近に愉しく読めたのは久しぶりだ。

 

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