『ビーグル号世界周航記』

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読書日記

2012年11月18日

『ビーグル号世界周航記』 チャールズ・ダーウィン著講談社学術文庫 880円+税

進化論を生み出し『種の起源』の著で高名なチャルズ・ロバート・ダーウィンが、若かりし頃1831年に英海軍の測量船ビーグル号に植物学者として乗り込み、南半球を就航して主として南アメリカ沿岸地域を隈無く観察した航海記である。
厳密に言えば、彼の著『ビーグル号航海記』を中心に彼の数多くの著書から出版元が抜粋編集したものがこの『ビーグル号世界周航記』であり、ダーウィン著とはいえないが…。

今からおよそ300年前のことであるから、今我々が知っている南米や南半球の姿とはおよそ異なり、ヨーロッパ文明が押し寄せる前の自然の姿がある。たった300年で、地球はこんなにも変わったのか。「未開」とか「開発」とかいう発想はどこか違うのではないか。
元は馬のいなかった中南米にメキシコ人が馬を持ち込み、撤退するときに置き去りにされた馬が野生化して繁殖し南米大陸の南の果てで発見されたりなど、ダーウィンの関心は尽きなかっただろう。
本著では、「動物」、「人類」、「地理」、「自然」の章立てがしてある。
「動物」たちは、ヨーロッパでは観たこともなかった珍しい動物たちを詳しく観察し克明にスケッチしている。蜘蛛のところにきて、流石に私は精読できずに本を閉じてしまった!
「人類」では、南米大陸南端ホーン岬あたりに住むフェーゴ人の、飢餓に貧すれば犬より先に老婆を殺して食べるという話しは、日本の姥捨て山説を思い出した。
「地理」では、ウルグァイのモンテビーデオあたりでラプラタ川の航行が未整備でわざと放置されているようだと見て、ここにイギリスの植民を最初にしたらこの川の景観はどんなに違ってどれほど立派な町々が岸辺に建つことであろうかと、帝国主義的植民地政策を考えたりしている。
「自然」では、チリで大地震に遭遇し、街が全壊しているさまを見て驚愕している。東日本大震災を思った。

などなど、海外旅行が盛んな今日のわれわれの旅とは目の当たりにするものこととは全く違う。正に新発見だったのであろう、ヨーロッパ人にしてみれば。そして、ヨーロッパ各国の世界帝国主義植民地争奪戦へと進んでいく。

  

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