『出家とその弟子』

トップ > 日記

読書日記

2012年01月04日

『出家とその弟子』 倉田百三 岩波文庫 600円+税

昨年暮れに「法然と親鸞展」を観て、読み返してみたくなった。
こころに透き通るような、素晴らしい戯曲である。
親鸞の他力本願の教えを取り上げている。
唯円ら弟子との苦悩の問答が身につまされて清らかに説かれている。

左衛門 (雪の中、親鸞ら修行の一行に宿を断ったもの)
      地獄から逃れる道はありませんか。
親鸞  善くならなくいは極楽に行けないのならもう望みはありません。しかし私は悪くても、別な法則で極楽参りがさせて戴けると信じているのです。 それは愛です。赦しです。善、悪を超えて働く力です。この世界はその力で支えられているのです。その力は善、悪の区別より深くてしかも善悪を生むのです。これまでの出家は善行で極楽参りが出来ると教えました。私はもはやそれを信じません。それなら私は地獄です。しかし仏様は私たちを悪いままで助けて下さいます。罪を赦してくださいます。それが仏様の愛です。私はそれを信じています。
左衛門  (眼を輝かす)殺生をしても、姦淫をしても。
親鸞   たとい十悪五逆の罪人でも。

たしか、親鸞は妻帯をした初めての僧だったはず。

作者倉田百三も凄い。
一高時代から文学活動を始め、同期に芥川龍之介、菊池寛、久米正雄、土屋文明らがいて、矢内原忠雄らもいて校長新渡戸稲造の影響下に濃い
宗教的雰囲気の中育つ。
この『出家とその弟子』は若干27歳の時、1917年(大正6年)に出版された。夏目漱石の『こころ』と並び創業まもない岩波書店のベストセラーとなり何度も版を重ねた。
海外でも翻訳され、ロマン・ロランの眼にとまり交流が行われ、仏訳には倉田40歳の時ロマン・ロランが序文を書き、仏教とキリスト教の融合をも思わせる「愛」についての思索を讃えている。
倉田は長年結核と闘いながら、52歳で亡くなる。(1891年明治24年生まれ、1934年昭和18年没)

 

[前の日へのリンク]← 
→[次の日へのリンク]

NewChibaProject