『スノーデン 日本への警告』

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読書日記

2017年05月21日

『スノーデン 日本への警告』 エドワードスノーデン他 集英社新書 720円+税

2016年6月4日に東京大学で行われた(社)自由人権協会70周年プレシンポジウム「監視の"今"を考える」を書籍化したもの。
前半は、スノーデン氏は亡命先のロシアからインターネットで参加。聞き手の金昌浩と対話、会場からやニコニコ動画からの質問にも答えている。
後半は、会場だけでの監視やプライバシー問題専門家5名青木理、井桁大介、ベン・ワイズリー、マリコ・ヒロセ、宮下紘各氏を交えての議論展開。
正に警世の一冊である。

2013年6月、「スノーデン リーク」で米政府の世界的大規模な監視体制を暴露した元情報局員のエドワード・スノーデン氏。
彼の語り口は聡明で博識で、人間であるために守るべき大切な意思を穏やかに説いている。
リークが投げかけたテーマは、監視だけでなく、民主主義の問題だ。
2001年9月11日の米国同時テロ以降、NSA(国家安全保障局)の監視システムは、トップ・シークレットだけではなく、マス・サーベスランスと言って無差別、網羅的な監視システムを敷いている。
これはインターネット技術の高度な発展で軍だけでなく安価で市井にも一般に普及しているグーグル、マイクロソフト、アップルなどなどの通信事業者などに、すべての一般市民も含めた全ての情報をNSAに流すように協力させている。特別ではなく市井の全ての情報を。テロ対策という口実の下に。
主としてムスリム監視のためだが、手口はナチのユダヤ迫害や米国の日本人強制収容や、日本の戦時の特高警察などと同様という。

私も見ているアメリカテレビドラマ「NCIS 海軍犯罪捜査班」では、NSA、FBIも絡めて膨大な情報網を駆使し瞬時に犯人を特定追跡しているのだが、まさにこの状況をドラマ化している。

(篠崎の贔屓にしている米国女流作家サラ・バレツキーは『ブラック・リスト』という題で、いつもの探偵V.I.ウォーショースキーが活躍するハードボイルドシリーズで、言われなく無差別に有色人種の排斥、イスラム教徒や黒人記者などなどが捜査され、市民のプライバシーや基本的法的権利が踏みにじられる危険性を表している。設定は同時テロを受けて翌年。発行は2004年。感度が早いや)

日本への警告として、例えば、2013年に政府がほとんどフリーハンドで情報を機密とできる「特定秘密保護法」が多数の反対にも関わらず制定されたことなどをあげて、政府を監視する市民の力が無関心と無知とで無くなっている日本の報道は危機的状況だと。メディアは政府のプレスリリースを単に繰り返すのでく、一人の記者として(プレスクラブではなく)の経験と判断で分析し、国民に知ってもらう、伝える努力が必要だと。
そして、
一般市井の人々の情報が、スマホやパソコン、携帯電話を使うことによって政府に追跡され監視される。何処に行って、誰と会って、なにを食べて、誰と何を話したか、筒抜けです。つまりプライバシーがなくなることになる。(既になっているのだが。)
プライバシーとは、あなた自身のことです。プライバシーは自分であるための権利です。施策するとき、文章を書く時、物語を想像するとき、他人の判断や偏見から自らを守る権利です、と。

現在日本ではそれこそテロ対策と称して、「テロ等準備罪」法が衆院で可決、平和憲法改正論が議論されているのだが……。

(だから、操作のほとんど分からないスマホなど、素人が使う必要はない。業者は商売だからどんどん機種を開発して消費を伸ばし売り上げを伸ばしていて、IT長者が続出しているのだ。そして情報が政府機関にどんどん筒抜け、とーー篠崎コメント)
こうして書いている事も、筒抜けである!! 諜報筋は日本語だろうとどんな言語でも通じている。

「あとがきにかえて」で、別途2017年2月1日行われた金しとの対談でベン・ワイズナー氏(米国自由人権協会常勤弁護士、スノーデン氏法律アドバイザー)が、「トランプ政権前にスノーデン事件があったのは大変幸運でした」としている。

 

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