『アルハンブラ物語』

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読書日記

2012年02月27日

『アルハンブラ物語』 W.アーヴィング 岩波文庫上・下 上780円+税・下900円+税

今年1月にスペイン旅行をするにあたっての下調べで、W.アーヴィングがアルハンブラの紀行文を書いて一躍旅行ブームを引き起こしたということを知った。発刊は1832年である。
W.アーヴィングといえば、高校時代だか大学時代だかの英語の授業の副読本として『スケッチブック』を英語で読まされた記憶が甦える。 

『アルハンブラ物語』は実に叙情豊かで優しい読み物だ。
著者が友人と二人で『ドン・キホーテ』よろしく忠実な伴を連れてアルハンブラまで馬で危険だがそれを楽しみながら長旅をし、グラナダについてからは荒れ果てたアルハンブラ宮殿に長逗留した話しである。
なんと羨ましい事か。ムーア人の王と同じ部屋に寝泊まりし、散策したのである。荒れ果てているとは言え。
200年近く前の事だから、道は山賊や密輸商人の巣であったり、アルハンブラ宮殿も倒壊したまま荒れ果てて傷病兵や乞食同然のものたちの勝手なねぐらとなりはてている。
が、彼らスペイン人は無類の陽気で話し好き。親や曾親から聞いたという昔話しや幽霊のでる伝説やら噂話を語るのが大好き。
それをアーヴィングは丹念に聞き取り、不思議な興味津々な小話として掲載している。
まるで『アラビアン・ナイト』の不思議な世界に入り込んだように、その昔のお姫様や王子様たちが出てきて、素敵な魔法を使うのである。鳥と話しが出来たり、最後のムーア人の王様たちが魔法で岩窟に閉じこめられていたり、魔法を解いてムーア人の財宝がざくざく出てきたり、イスラム教徒とキリスト教徒の恋が実ったり、などなど。

童話が大好きな私は一時優しく無邪気な夢見心地にひたれた。
そしてこの目でアルハンブラ宮殿やヘネラリーフェ離宮などを実際見ているので(雨で短時間ではあったが)、夢が現実みを帯びて膨らむ、あの素敵な塔での話しね、と。
著者はかなり詳しく本格的にアルハンブラの歴史を研究し、描いたのであろう。
歴史好きのわたしには、詳しい注釈がこれまたおおいに参考になった。
 

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