『ミス・マープル最初の事件』

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読書日記

2016年03月29日

『ミス・マープル最初の事件』 アガサ・クリスティー 創元推理文庫 880円+税

原題は『牧師館の殺人』 ミス・マープルが初めて登場する。1930年に発表された。著者40歳代の時。
第一次大戦が終わり、大英帝国が国内ではヴィクトリア朝の教養と醇風美俗を身につけた世代と若い世代との世代断絶が顕在化し、海外ではまだ植民地政策が敷かれていた頃。
ミス・マープルというおしゃべりで穿鑿好きなオールドミスを主人公に据えた、当時としてはあたらしい読み物。今でも十分に読み応えがある。
「現代のわれわれは、かつて魔女たちを火あぶりにした時代を考えると戦慄する。しかし、今に、罪人を絞首刑にしたことを考えて身震いする時代がきっと来ると思うね」 当時として著者のもの凄い洞察力を感じる。
そして世界的認識の広さ。「ミス・マープルを訪問する口実が欲しいのです。あの方は自分が造っている日本式庭園に使う岩や石には目がないと聞きましてね」この台詞は後に事件解決の糸口ともなるのであるが、彼女は庭の手入れが得意なのである。
日本庭園なんて、親しみが湧いてしまう。

さて、アガサの作品にふけるのもそろそろしまいとしようかな。彼女の作品は軽く読めば読みやすい作品だが、それだけではもったいない。一言一言に意味が深く存在している。それを発見するのが愉しいな。  
 

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