『とはずがたり』上

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読書日記

2014年04月30日

『とはずがたり』上 次田香澄 講談社学術文庫 1450円+税

鎌倉時代、武家階級に実権を奪われた京都の貴族宮廷社会は、想像を絶する退廃的な地位争いや男女関係が繰り広げられていた。この原作は、後深草院(前天皇)の後宮だった、久我(こが)家系で雅忠(大納言)の娘「あかこ」が、自らの異常な生涯を赤裸々に綴った手記である。日記とは異なり巧みに記述されている。禁中の秘事だったためか長らく宮廷に秘蔵されていた。
著者が現代語訳し丁寧な注釈を施している。
作者は、院と父大納言との密約で4歳にして後深草院の御所に召され(1261年)、14歳で院と契る。その後、権大納言や院の弟の高僧、近衛大殿ら、院を取り巻く複数の男性と契る。秘めた件や院が薦める件もある。院と弟の亀山天皇との鞘当て、軋轢も続く。そうした事実が彼女の冷静な観察眼を通して綴られ、貴重な史料とすらなっている。
当時の宮廷も、まだ詩歌のやり取りや遊戯に関してなど『源氏物語』や『長恨歌』からの引用が多くあり、雅ではある。
時は鎌倉中期、鎌倉幕府8代執権北条時宗の時代、蒙古襲来あり、百姓一揆、親鸞の死ありと世相は厳しい。
南北朝の起因はここから生じる。
因みにヨーロッパでは、イタリア・ルネサンスが始まる頃。

この(上)は、あかこが20歳で大殿と契る件で終わる。後半、(下)が待たれる。 

久我美子という女優が貴族の出だということを昔聞いた覚えがある。この久我家の末裔か。

 

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