『妻たちの二・二六事件』

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読書日記

2015年03月31日

『妻たちの二・二六事件』 澤地久枝 中公文庫 629円+税

二・二六事件とは、昭和11年2月26日、熱血青年将校らが、「昭和維新」を掲げ天皇親政を求めて政府高官や軍部首脳を襲撃し、4日間で鎮圧された事件である。
この事件では、高橋是清蔵相らが殺害された。私は是清の孫にあたる人を知っていて、彼はこの時是清と同じ家に寝ていて、幼いながらに何か異変があったと気付いたと言っていた。
これまでの流れとして、昭和6年満州事変、昭和7年五・一五事件などがある。北一輝の「日本改造法案大綱」になる五・一五事件では犬養毅首相が殺された。

首謀者たちは、自決または刑死者21名。
いずれも20歳代後半から30歳代初めの若者であった。蹶起の成功を信じていたのか、蹶起が急だったのか、多くが新婚か長くて結婚2、3年。若き妻たちは、何も知らずに26日未明に夫を見送り、事件を知るのは報道か同士かから。
当時は、女とはただ子を産み家庭を守るだけの存在か。自立や自活はもっての外。
親の言いなりに結婚し、夫に頼りきりの、頼りない妻の姿が浮かび上がってくる。

事件後35年して、著者は物言わぬ「叛徒の未亡人」の重いこころを取材し、綴っていく。
著者の戦中戦後の生き様も苦しいものがあり、出版社で五味川純平氏の『戦争と人間』の資料助手をして、自ら40歳にもなり、誰も気にも留めなかった未亡人の掘り起こしをする気になったようだ。

今日、安倍内閣の動きが危惧される。これは私だけが感じているのではなく、多くの人からも聞く話しだ。
自衛隊の海外派遣問題、沖縄の米軍移設問題、憲法改正問題、近隣アジア諸国との外交問題などなど、世界中が何かきな臭い中で、日本の動きは国民のために余程慎重にしてもし過ぎるということはあるまい。
戦後70年、戦争の不条理痛みを知らない人が殆どとなった。安倍さんだって全く知らないだろう。勇み立つばかりが能ではない。
シンガポールのリー・クワンユーさんが亡くなり国葬となった。彼は、Look East と常に言い、西洋ではなく日本を見習えと言ってくれていた。それに応えなければ、ね。合掌。
 

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