能三題

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スローライフ日誌

2009年11月09日

国立能楽堂で金春会定期能を鑑賞した。

「田村」は、坂上田村麻呂が勅を受けて鈴鹿山の賊を討伐するに、合戦中に千手観世音が出現し助勢で賊を全滅させたという、観音の仏力を説いた能。
清水寺が田村麻呂の建立したものと、はじめて知った次第。
詞章の素晴らしさは抜群と、いつも連れて行って下さる方の言だが、私はまだまだ不勉強。

「井筒」は、"昔男"と言われた在原業平の女の霊が彼を恋い慕う能。
女とは紀有常の娘で、業平と一緒に住みながら彼が別宅の女の元へ通っていくのを、"風吹けば沖つ白波龍田山、夜半にや君が独り行くらん"と、彼の道中の身を案じるような女性。人待つ女とも井筒の女ともいわれた。
序の舞は、能の"静止"を見せる。殆ど動きはない。業平の形見の直衣を羽織って、井戸に映った姿を懐かしむ。
連れて行って下さる彼はここでいつも涙が出ると。男心にも同じようなものがあるのだと。

「乱」は、「猩猩」の別編といえようか、酔狂な能。
赤装束、赤い面、赤毛の猩猩の姿で、酔い踊る。酌めども尽きぬ酒水の話しであり、酒飲みにはもってこいの目出度くも楽しい能だ。
菊水や白菊、菊川といった今の酒の名前はここからとっているのでしょう、きっと。

能は、オペラや歌舞伎、狂言のような派手な仕草や演技は全くない。見ている側のこころを映すばかりとも言われる所以である。
詞章を知らなかったらさっばり聞き取れず、従って分からず、まったくお手上げ状態のこころばかりが映されましょうぞ。

私は能の深みに段々填っていきます。 

能鑑賞を終えて、いつも連れて行って下さる方と、猩猩よろしく赤坂で美味しい酒を目出度く相飲みましたことは当然の成り行きでした。
はい。
 

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