エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

両陛下に拝謁”(2005年07月11日)

  先の 4 20 日郵政記念日に、わたしは郵政事業に貢献したとして、総務大臣より感謝状を戴いた。そして、皇居に参内して、天皇皇后両陛下に拝謁の栄誉を賜った。

 明治生まれの両親が生きていれば、そんな恐れ多いことと、卒倒したに違いない。皇室のアルバムを手に入れては大切にしまってあったりしたものだ。

 身近にお見受けしての印象は、陛下がとてもふくよかにおなりであること、そして、美智子皇后のお美しいことであった。綺麗という表現は当らない。むしろ、楚々としていらっしゃる。控え目にしかし寄り添って、無心に陛下に尽くされておられるお姿が清清しくお美しいのである。

 今日、皇室のことがいろいろと取りざたされている。もともと皇室とは、法に定められた特別のものである。一般市民の感覚の恋愛結婚だけで皇位継承が計れるものとは違う。ましてや皇室も少子化の時代、男子が生まれる保障はどこにもない。法は変えることができる。が、それ以前に、永い歴史的観点から見ると、代々何世紀にも渡って続いている皇室は、第一級の歴史的文化財、人間国宝という存在であることを忘れたくない。その意味でも、国として大切に存続させなければならない義務は、計り知れないものがあるのだ。

 両陛下の公務ご多忙はたいへんなものである。分刻みのご様子だ。我々が拝謁した日も、その後、国賓を歓迎した晩餐会が開かれたとテレビで報じていた。新聞にも、毎日のように、植樹祭、高齢者施設のご訪問などなどが載っている。

 先日も、戦後 60 年にして初めて太平洋戦争の犠牲者を慰霊するため、米国自治領のサイパンに出向かれたことが報じられていた。「海ゆかば」をお聴きになり、バンザイ・クリフで御頭を垂れ、韓国人の慰霊碑に黙とうを捧げられと、心底重いお勤めであっただろう。雨の中、傘をたたまれての慰霊。

 両陛下の御髪がこのところ随分白くなられた。今、皇室を支えているのは美智子皇后ではなかろうかと、ふと感じた。

 

[イーピーレポートへ]

NewChibaProject