エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

安全・安心は暮らしの基本”(2005年12月11日)

 長引く低成長経済下で、新しい方向を探るでもなく、相変わらずの利益追求・コスト削減・利便性の追及は収まらず、ここへきてその歪みが大きく露呈されている。 アスベストが公立学校や病院施設などに現在も残っている問題、多くのマンション、ホテルの耐震強度偽装設計事件など。安全や安心を求める市民の暮らしを、逆に脅かす社会が作り上げられていたのだ。


 今回の耐震強度偽装事件が明るみに出る直前に、住宅産業に携わっている知人が、「仕事柄、住まいを買う気にならない」と話していた。建設業界ではこうした耐震偽装や手抜き工事がまかり通っていたのだろうか。今日、各地で震度5を越える地震が頻発しており、建物の耐震性は住民の基本的関心事なのだが。


 何らかのリスクと背中合わせを避けられないのが現代社会。その万が一の事態に自ら備えた救済が、保険金不払いということでふいになる。これでは何のための保険か。保険金不払いも大きな問題として浮かび上がった。
 

 安全や安心を脅かす問題は、社会の技能が専門化、複雑化、構造化してきていて、一般にはなかなか見抜けす、社会問題化してきている。官民を問わず専門的で適正なチェック機関、救済の方策善処が待たれる所以である。

 そんな中、わが国で初めて、国民保護法に基づく実動訓練が福井県で実施された。国民保護法は、他国からの武力攻撃や大規模テロから住民を守る方法を定めた法律。今回は、同県美浜町にある関西電力美浜原子力発電所が国籍不明のテロリストに追撃砲で攻撃を受け、放射能漏れの危険性が高まったという想定で実施された。地元住民、国、県、民間企業、自衛隊など140機関、1300人が参加した。地元住民にとって、テロであれ事故であれ、万が一にも起きてはいけない危険な放射能漏れからいかにしてわが身を、そして家族を守るか、そのための避難経路の確認は最低必要なことであったろう。

 

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