エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

隠蔽体質”(2007 年04月11日)

 彼岸過ぎ早々に、粋な朱塗りの屋形舟を仕立てて隅田川の花見を実施した。第一回目の桜開花予想発表であれば、その日は桜満開だったはずなのだが、気象庁のコンピュータの計算ミスと厳しい寒の戻りが重なり、桜の蕾は固いままだった。
 最大手コンピュータ会社の元重役も誘ったが、彼曰く「コンピュータを信用してはいけません!」
  その後、開花予想は二回、三回と変わって発表されたらしい。

 信用したいのが開花予想程度であればまだいいのだが、よくは分からないがでも信用していた原子力発電の安全に関する情報が、隠されていたり改ざんされていたことが分かってしまうと、これは反対にたいへんな不信に繋がってしまうのは必至である。

 科学技術の最先端を全ての国民が理解できるはずはなく、完全には解らないからこそ、大丈夫なのかしらと思いつつ、従事している人や会社を信用し信頼するしかない。この信用信頼に、全てがかかっていることを当事者は今一度厳格に肝に銘じなければなるまい。

 このところ一般の会社や電力会社の不祥事発覚が相次いでいる。そんな中、原子力発電所の過去の点検中のこととはいえ、一部の制御棒に脱落事故があったというマスコミ情報に接し、そんなことがあったのかと驚いた。
  専門的にみれば臨界事故につながる恐れなどなく、元に戻ったのだから大丈夫という判断だろうが、その記録が残されていないとすると、国民は、やっぱり電力会社は怖いことを隠していたのだと受けとめてしまう。

 3月25日に震度6強(M6.9)の能登地震が発生したが、北陸電力は問題の志賀原子力発電の耐震想定を最大でM6.6とまでしか想定していなかったらしい。
  ここでも基本的な安全管理に対する甘さが発覚した。

 今日にあってはどんな情報も隠しおおせるものではない。事無きに済んだものでも、後から次々と拙い情報が明るみに出てくれば、大切な信用信頼は失墜する。どんな事態であっても、兎に角初期の広報、情報公開が最高の問題解決策であることを知るべきだ。

 

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