エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

自主的停電”(2003年7月10日)

 この夏、東電の電力供給能力がどのようになるか、関係者の必死の努力にも係わらず未だ不透明である。

 ところが産業界は別にして、この問題は、一般市民にとってはそれほど逼迫した問題としては受け止められず、どうしたらいいかも具体的に知れず、どうにかなるのではないかといったところである。

 一部に「停電の日」をつくって、電気の有り難さを知らしめることが必要だとの強硬論を唱える人もいたが、電気が社会のあらゆるシステムに組み込まれてしまった現在、それはあまりに無責任な発言だ。責任ある電力供給者は、電気が止まることのないように最善の努力を続けなければならない。せいぜい出来て、節電の呼びかけである。電気を使うか使わないかは、偏に消費者の選択でしかない。電気を使わないための選択肢が、料金制度も含めてあまり用意されていないのが問題だが、これも緊急事態に備えてこれからおおいに検討されなければなるまい。

 そんな中、先の夏至の6月22日、市民の発案になる全国的な、いわば自主的停電の体験キャンペーンが実施された。夜の8時から10時まで電気を消しましょうという、誰にでも出来るただそれだけのこと。だからこそか、ネットを通じて瞬く間に全国に広がったと聞いた。この趣旨に賛同した環境省や自治体、大手企業、主だったライトアップ業者などがそれぞれのキャンペーンをした。東京タワーの灯も消えた。

 この運動の主提案者と親しかったので、いきさつを聞いた。「東電にも一緒にやりろうと声をかけたが、断られた。でも、どのくらいの効果が挙がったかは、調べてくれるそうだ。」東電は後援とでもして最後に小さく名を連ねておけば、停電問題をみんなと一緒に考えたいとするいい機会だったのに。惜しいことをした。

 当夜は、我が家でも自主的に停電してみたく、灯りとテレビを消して、早めに床に就いた。不思議と安らぐ気分で、今年は一ヶ月くらい夏休みにして、久々にのんびりしようかなどと、夢は広がっていった。

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