電気新聞「今週の一冊」欄に載せた最近の書籍紹介

もうひとつの日本は可能だ』(2003年8月29日)

もうひとつの日本は可能だ

内橋克人著
光文社 1400円

 このままではいけない、別の違ったかたちがあるはず、とさまざまな分野で考えられている。政治、経済、国際関係、教育、企業活動など、もうひとつの姿を探らなければと、意のある人々は追及を重ねている。

 本書は、こうした日本の現状を、国際的に幅広いインターネット上の情報にも基づき、著者独特の人間に優しい思慮深い洞察力で分析している。「 ATTAC 」 ( 本部フランス ) 副代表スーザン・ジョージさんの反グローバリゼーションの主唱「もうひとつの世界は可能だ」から、本著のテーマが出ている。

 前半の章は現状分析である。特に米国ブッシュ政権のグローバリゼーション、マネー資本主義、そして世界の「民主化」は新「自由化」主義とばかり、イラク攻撃後は「世界市場化」を果たし、米国企業の独壇場となっていると警鐘を鳴らす。

 規制緩和一辺倒、その背景をなす空想的市場主義にも正しい批判をしなければと、経済学者宇沢弘文氏との対談は興味深い。宇沢氏は、氏とシカゴ大学教授時代同僚だった、後にシカゴ学派としてレーガン大統領時代のデレギュレーション策展開の中心人物だった経済学者フリードマンの理論を、人間の尊厳を否定して自分たちだけもうける自由を主張するものであり、そのときどきの最も経済的な強者、あるいは大企業に利益を追求することを認めよとするものであると、フリードマンの実像のエピソードを交えて警鐘する。

 著者は、そのフリードマンを神のごとく崇める日本の経済学者らが、日本政府を乗っ取っている間に進行している事態を危ぶむ。

 著者は、日産のゴーン氏は今や日本のヒーローで、小泉首相までが有難くレクチャーを頂いたらしいが、そんなことより日産工場の閉鎖された地元を歩いて欲しいともいう。企業にとってのマイナス要因はすべて地域社会に落とされているからと。企業は大リストラで従業員の首切りはできても、「国民」のリストラ、首切りがゆるされるはずもないと、コーン流に流されることを警告する。

 最後の四章で「人間復興の社会」を説く。もうひとつの日本のかたちである。そこは、「人間力」が基本であり、「知性」が求められる。そのためには「育心」が大切となってくる。企業優位のマネー資本主義から、地球に生きる人間の生存条件を優先に考える社会へ。食料、エネルギー、そしてケア ( 介護を含む人間関係 ) を基盤に据えた構造改革こそ、今しなければならないことなのだと。

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