電気新聞「今週の一冊」欄に載せた最近の書籍紹介

モッタイナイで地球は緑になる』(2005年10月07日)

   ケニア人女性である著者は、 30 年にわたって母国に「グリーン・ベルト・ムーブメント (GBM) 」を提唱広め、それを通してケニア社会の貧困と闘い、政治腐敗と闘い、特に農村女性の自覚向上に励んで、 2004 年ノーベル平和賞を受賞した。

 前モイ独裁政権下では中傷、嫌がらせに晒され、投獄されるも何度か。

 しかし、数十年振りの自由選挙で彼女は国会議員に当選し、 2003 年から環境・天然資源・野生動物省副大臣を務めている。

 この本は、 1977 年から著者が字も読めない一般の農家の女性たちと始めた「グリーン・ベルト・ムーブメント」の歴史、プロジェクトの目的、組織作り、資金集めなど運動の運営についての苦労、努力が語られている。

 日本の環境保全運動などとはおよそ較べものにならない壮絶な闘い、努力がなされた。独裁汚職政治からの弾圧の中、教育のない貧困のひとびとを、自立して豊かになるには国土を緑化しなければと、外来種でないもともと自生していた木の苗木を育て、汚職役人と対立しながらそれを会員に配り、一本一本木を繁らせていく。農家の女性の意識を高め、燃料の木を集めに遠くの土地まで歩かなくて済むように。

 いまでは 3000 万本の木々がこの運動で繁っている。しかし、アフリカの大地には 1.7% しか森林がない。著者の目標はせめて 10% までにすることである。

 著者は、 2005 2 月に NPO 環境保全シンポジウム出席のため来日し、「モッタイナイ」という日本語を知り感動した。このシンボジウムの抜粋も本に載せられている。シンポジウムで、「もったいない」を、ゴミを減らすこと、限られた資源を繰り返し使うことの真髄と捉え、ひとりひとりが実践すれば大きな力になる。日本発の国際運動にしていきたい と述べている。エネルギッシュだ。

 著者の目には、日本はたいへん恵まれ、環境への取り組みが素晴らしいと映ったようだ。「日本の国土の 7 割が森林だと聞きました」といっている。が、その実態は森林の 4 割が人工林だが、その 8 割が民有林。これが殆ど手が加えられずに荒れたまま。これこそもったいない話なのである。

 愛・地球博閉幕の挨拶で、小泉首相が「ものを大切にする『もったいない』のこころが広がり…」と言ったらしい。言うだけでなく、日本発の国際運動に尽力して欲しい。

 筆者は 5 年前に『もったいない思い』という本を出した。 もったいない という言葉には格別な思い入れがあるのだ。

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