変わる農業王国

東京新聞千葉版 2006年08月22日付け

第3部 消費者と生産者のはざまで<4>

(インタビュー)


自著を手にしながら話す篠崎悦子さん=千葉市中央区で

 スローフードに代表される、地元を大切にする生き方を広げようというホームページ(HP)「ニュー千葉プロジェクト」を開設した女性がいる。九十九里町で育ち、現在は千葉市稲毛区に住むホームエコノミストの篠崎悦子さん(60)だ。東京電力で消費者と企業のパイプ役として、約三十年働いてきた経験を生かして活動の輪を広げている。東京電力では、消費者に省エネの大切さと省エネの暮らしの必要性を訴えてきた。

 篠崎さんはスローフードに代表されるスローライフを「地元を固めること。身の丈にあった暮らしを、ゆっくりと営むこと」とする。東京電力では全国はもちろん、世界中を見て回った。定年後は生まれ故郷の千葉を見つめ直し、千葉にかかわりたいと願ったという。

 スローライフに行き着いたきっかけは、東京電力に勤めていた二〇〇二年、スローフード運動で有名なイタリアのブラという町を視察したこと。毎年のようにバリアフリーや福祉問題など、テーマを絞って海外を視察していた。その年のテーマが「スローフード」だった。篠崎さんはスローフード運動の要点として、(1)家庭の味を子どもに伝える(2)地場産業を育てる−の二点だとし「日本では、スローライフとした方がピッタリくると感じた」と話す。

 これまでやってきたエネルギー問題も、スローライフの延長線上にあると思った。退職したらスローライフを実践し、生き方の変革を提言したいとHPを開いた。

 HPでは、房州枇杷(びわ)、イワシのつみれ汁、ゆで落花生、太巻きずしなど千葉のスローフードを紹介しているほか、掲示板で閲覧者の意見などを掲載。さらには母親を介護した自身の経験を基に、千葉の介護についても紹介している。

 また、HPを通して知り合った友人らで「こころをスローにすること実行委員会」を設け、十人ほどの委員と二カ月に一回程度の、産地直送レストランなどでゆっくりとした食事を兼ねた勉強会を実施。年に数回は、スローライフをテーマにした数日間の遠足にも出掛けている。能登半島や南房総などに行き、地元を大切にして地域を掘り起こす勉強を続ける。

 篠崎さんは「実践として、リヤカーを引いて売りに来る農家から野菜をなるべく買うなど、千葉産のものにこだわっています。スローライフは手間、暇、金が必要ですが、心が豊かになります」と話し「これ以上発展にこだわる必要はないのでは。心豊かにやっていけるようにしたい」と、生活の変革を訴え、実践している。

 ニュー千葉プロジェクトのホームページはhttp://www.newchibaproject.com/へ。

NewChibaProject