『飛ぶ教室』

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読書日記

2021年08月26日

『飛ぶ教室』 エーリッヒ・ケストナー 新潮文庫 490円+税

児童文学作家として知られた著者は、ファシズムへの批判でナチスに迫害され、この作品発表を最後にドイツ国内での出版を禁じられ著作は焚書処分を受けた。『二人のロッテ』などがある。戦後西ドイツペンクラブ会長を長く務めた。
「二人のロッテ」は映画を見た記憶がある。
ケストナー青年が夏にクリスマスの物語を書くためにスイスの氷山が見えるところへ行って作品を書くという件ではじまる。ギムナジウムという男子高等学校が舞台。そこのさまざまな事情を抱えた生徒たちのクリスマスを控えた物語。
上級生の下級生いじめ、弱虫といじめられる子が決心して高い梯子から飛び降りたり、実業学校生と決闘事件をおこしたり、「飛ぶ教室」というクリスマス劇を生徒たちで自作自演したり、と盛りだくさんで心温まる。教師で寄宿舎の見回りもする「道理」さんや公園の中にある一台の列車に住む「禁煙」さんらにあたたかく育まれて成長していく。
テーマは勇気である。ハッピーエンドで皆がクリスマスを迎える。
あとがきがいい。ベルリンに戻ってカフェで物思いに耽っていると、ギムナジウムの帽子を被った少年と船長らしき中年の紳士を見かける。思わず声をかける。作品に出てくるジョニーと船長だ。凄くいい構想でできているのだね。

 

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