説明責任

 

 顔の見える経営がよいといわれる。仕事とは、顔と顔のつながりであり、相手の顔がお互いよくみえて初めて成立する。地元に密着し、誰が何を必要としていて、それにどう応えたらいいかを把握している簡易保険の業務などはその良い例であろう。

 ところが近頃、顔の見えないことが多い。何がどうなっているのかさっぱり分からない。郵政事業改革もその一つではなかろうか。何がどう改革されようとしているのか、簡易保険はどうなるのか、消費者にはいっこうに見えてこない。「どうなるの。どうなっているの。」と聞いても、誰も応えてくれない。

 どうしてであろうか。多分、その改革作業に、本来改革によってメリット・デメリットを受けるはずの消費者が不在だからである。消費者の方に向ける顔がない。消費者からの声を聞くでもなし、消費者に情報が伝わってくるでもない。

 説明責任が果たされていないのである。公開討論会をもつなり、新聞紙面に大きく意見広告の形で改革の進行状況を示すくらいの、国民への情報提供がぜひ欲しいところなのだが。

 こうした重要な改革のみならず、身近な日常の仕事においても、取引の恩恵を直接受ける消費者に、十分な内容の説明はなされるべきことである。政府のみならず該当する事業者は、「説明責任」の重要性をしっかり認識して仕事にかかって欲しい。

 今年の 6 月、 36 年ぶりに消費者保護基本法が改正されて保護がとれ、「消費者基本法」と改称された。消費者対応は、消費者を保護することから消費者の自立を支援する方向にかわった。

 消費者の 5 つの権利も明記された。安全の権利、選ぶ権利、知る権利、意見が反映される権利、そして救済される権利である。

 この消費者の自立支援並びに権利の尊重を図るために、事業者の責務として、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供することが定められたのである。

 説明責任とは、相互に活発に活動していて、相手とのコミュニケーションが十分にとれ、正しい情報提供ができ、相手の声を聞く耳があるということで、こうすれば顔もよく見えてくる。消費者教育という形をとってもいい。クーリング・オフなどのデメリット情報も積極的に示すことができ、オープンな情報の流れの中で、顔の見える仕事ができ、消費者からの信頼を保つことができるのである。

 ものごとが変わっていく過渡期にこそ、説明責任は求められる。

(財)簡易保険加入者協会月刊「保険展望」

2004年12月号

巻頭エッセイ

[篠崎悦子プロフィール]

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