エネルギー・フォーラム社刊「イーピーレポート」視点欄に連載している最近のエッセイ

第90代首相誕生”(2006年10月11日)

 90代目となる新首相に52歳の安倍氏がすんなりと誕生した。前小泉内閣の官房長官をしていたので、急な方向転換はなくそつなく繋ぎをしていくようにみえる。
 気がかりなのは、負の遺産をどのように修正するのか。そこに国民は大いな期待をかけているのである。一般国民は首相を選ぶことは出来ないのだ。

 「美しい国」などと作文上手なだけでは物足りない。
  美しい国と言えば、江戸末期に世界旅行で日本に立ち寄ったシュリーマンは、その旅行記に当時の日本の美しさを確かな観察眼で記している。「…この国(日本)には平和、行き渡った満足感、豊かさ、完璧な秩序、そして世界のどの国にもましてよく耕された土地が見られる」「彼ら(日本の役人)に対する最大の侮辱は、たとえ感謝の気持ちからでも、現金を贈ることであり、また彼らのほうも、現金を受け取るくらいなら『切腹』を選ぶのである」
  今ではこれらは完全に失われてしまった。

 「教育問題」に重きを置くのは結構だが、秋に学期始めを移すというようなことでは事足りない。
  そもそも教育が政治の具に上がってくるのが大きな根本的社会的問題なのではなかろうか。経済社会から出てきた「勝ち組負け組」という恐ろしい言葉がまかり通る世の中を、どのように正していくのか。先般、道路で小学生らしき男女が自転車ですれ違い様に、「死ね」、「消えろ」とお互い相手を罵りあっている場面に遭遇した。多分これは普通の会話なのかもしれないが、このままでいいはずはない。
  子供たちの”人間としてのこころ”を何処も誰も親すらも育てていない。

 若い首相はアメリカ大統領府に似た官邸を造りたいようだ。
  派閥を意識せずとはいうものの、老壮精を取り入れたとはいうものの、その割りに強力な専門力に欠ける嫌いがなかろうか。そもそも日本の政治家には目に見えた強い専門性は育たなく、従って優秀な官僚に頼らざるを得ないのが実情ではあろうが。

 ともかく国民は期待せざるを得ないのである。

 

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