電気新聞「今週の一冊」欄に載せた最近の書籍紹介

民営化という虚妄』(2005年05月13日)

東谷 暁著

祥伝社   1680 円

 

 著者は小泉首相の掲げる行政改革イコール民営化という方法論の矛盾点をつき、国がやるべきこと、公的にしか成しえないことがあると訴える。

 先ず、現在国会に法案提出がなんとか果たされた郵政民営化について、その矛盾点を解析する。 2004 9 月に閣議決定された「郵政民営化基本方針」は、自民党内の議論や政治的駆け引きですでに多くの妥協修正がなされているので、著者執筆時点での民営化論解析になるのだが、概ねは次の通り。例えば郵政事業を市場に委ねるということは、国内だけのことではなく、金融だけのことでもなく、物流も含めて広く国際的市場参入につながらざるを得ないことを十分意識しているのか、郵貯・簡保合わせて 350 兆円が民間金融市場に流れたら、前代未聞の大バブルが発生しやしまいかなどなど。

 失敗したといわれている道路公団民営化は、著者は落ち着くところへ落ち着いて難を逃れたとみている。実際に議論そのものが著名な作家の論に引きずられた態で、良く理解できなかった道路公団民営化ではあったのだが。失敗したという論調は、民営化推進委員会が意見書などで主張している、 100% 株式公開や道路所有の民間化が達成されないではないかというところにある。が、著者はライバルが無数にいる市場での自由競争やコストパフォーマンスと、道路のような公益事業のインセンティブは全く違うものであり、また道路という連続した国のインフラを民間にただ払い下げて改革が果たせるかなどと、完全民営化だけが改革とみるイデオロギー化した民営化論に釘をさす。

 今日自由化が進められる電力産業を、戦時下の国家管理から分割・民営化、しかも地域独占で脱皮させた松永安左エ門の構想力を高く評価し民営化の成功例としてあげる他、国鉄や電電公社の民営化も先例として分析している。

  行政改革は古今東西にあった。政権交替だけでは改革できない政治の積った澱を浚っていかなければならない。行政改革を唱え、民営化で小さな政府を目指した英国のサッチャー改革や米国のレーガン改革など多くの外国の例を辿り、主に民営化で失敗した例が本著では紹介されている。

  民営化だけで行政改革を図ろうとすることの難しさ、国としてなさなければならない仕事、国営の、公営の効率化、そしてインセンティブのあり方を、今一度問い直させられる著作である。

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