『船出(上)』

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読書日記

2021年10月17日

『船出(上)』 ヴァージニア・ウルフ 岩波文庫 920円+税

ヴァージニア・ウルフはいまだに関心の深い作家である。日常の出来事を淡々と描くのだがその観察眼は類まれに鋭い、そして暖かだ。何度か自殺未遂をかさね、そして入水自殺して果てる。どこにそんな兆しがあるのか知りたくて殆どの作品を読んでみるがわからない。神経を病んでいたのはたしからしいが。
この作品は彼女のデビュー作。1913年に執筆完成する。第一次世界大戦前夜だ。1912年に結婚するも、強烈な頭痛が続き13年に療養所に入所、睡眠薬自殺をはかる。さらに安静が求められ、出版は15年にもちこされた。

深窓の令嬢として育った24歳の一人娘 が、父親の持つ貨客船で世間を知り、南米という新境地を見聞するために、伯母夫婦付き添いの下、長旅に出て、そこで知り合う様々な人々との交流を描いている。
古典、詩集、小説など読書は必修、そこから得る知識や感性のやり取りが上等である。政治に関しても関心の高さを表しているのが作者ならではである。
後に独立した作品となる「ダロウェイ夫人」も政治家の夫と共にすでにこの船に乗り込んでくる。すでにいろいろの作品の構想が育まれていたのか。
(下)が愉しまれる。

 

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