『御家人斬九郎』

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読書日記

2017年12月10日

『御家人斬九郎』 柴田錬三郎 集英社文庫 860円+税

ご存じ、柴田錬三郎作である。
柴錬と言えば「眠狂四郎」。これもよかった。昔、映画でしか見たことがなかったが、市川雷蔵のとことんニヒルな狂四郎に酔いしれた。
実は「斬九郎」が柴錬作とは知らなかった。最近CATVの時代劇専門チャンネルを見るようになって、渡辺謙の「斬九郎」にはまり、本を読むこととなった次第。斬九郎はニヒルではあるが洒落もありユーモアもある。
柴錬の深い博学に感心する。作家であれば当然と言ってしまえばそれまでだが…。当代の特にベストセラー作家たちは薄っぺらで物足りないような。読まないけれどもね。
斬九郎は通称、正式には松平残九郎。東照権現様と家祖を同じくする大給松平家の末裔である。で、末子の斬九郎が孟母(物凄い、小鼓、薙刀の名手。美食家、大食漢。79か80歳)と二人住まい。この二人、顔を合わせれば大喧嘩。従って斬九郎は懇意にしている船宿や吉原に居候することが多い。御家人ではあるが最下級の三十俵三人扶持(今でいえば年俸20万円?)。これではやっていけない。母を養うには稼がねばならない。直参は公に副業は許されていないので、彼は内緒の例えば大家が内内に切腹するときの介錯を有料でするなど、これをかたてわざという、剣は敵なしに強い。
といった具合に、江戸の歴史から、武家の作法、文化の道、綺麗処、辰巳界隈、中国の歴史、オランダ屋敷、各藩の密貿易と、読んでいて実に愉しい。
そして、言葉遣いが、江戸っ子のべらんめえ調。きりっとしていていきがいいったらありゃしない。

現代の今、英語教育を小学校から始めるとか素っ頓狂なことをいっているが、日本で英語教育が成功しないのはこれまでのことでよくわかっていように。それよりも忘れ去られていく素敵な日本語をもっと大事にしなきゃぁねー、と。

ドラマでの「斬九郎」の、渡辺謙ははまり役だねぇ。そして、麻佐女(まさじょ)つまり母親役の岸田今日子もいいねぇ、そして辰巳芸者の蔦吉ねえさんを演じる若村麻由美の見事な事。斬九郎でなくとも惚れ惚れしてしまう。
 

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