綿入れ

2004年12月13日

 ぽかぽか陽気で、日当たりのいいわが家は日中暖房がいらない。

 亡母手製の綿入れを着ているからかも知れない。

 母は、晩秋のいい天気の日、綿入れ作業をしていた。

 布団、座布団、半纏と、ふわふわの綿を、裏返しにして平らに広げた布団地や半纏の布の上に幾重にも重ねて、見事に包み込むように表がえして、布団だったら綴糸と布団針で四角と縦列に2、3本、座布団だったら真ん中をとめて。あのすごいふかふか感が、手ぬぐいをあねさん被りにした若い頃の母の姿と共に、今でも暖かく思い出される。

 母は小さい私に何でも手伝わせたので、綿入れも理屈では出来るつもりでいる。が、残念ながら実際にしたことがない。

 布団屋さんに、綿を打ち返して入れ直してもらっている

 東京四谷3丁目に、たまに行く小料理屋「四月一日」という名のところがある。読み方は「わたぬき」である。4月1日には綿入れの綿を抜いたからである。昔の衣替えのことであろう。だとすると11月1日あたりが綿入れであろうか。

 昔の人たちは、暮らしていくための必要ごとは、何でも自分の手でできたものだ。

現代のわれわれは何もできない。子供たちに伝えていない。

 科学が滞り、商業が滞り、いざとなったとき、ふるえていることしかできないのか。

 

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