『猫のしっぽ カエルの手』

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読書日記

2011年08月01日

『猫のしっぽ カエルの手ーベニシアの手づくり暮らし 英国里帰り篇』DVD付き ベニシア・スタンリー・スミス 世界文化社 2940円

 著者ベニシアさんは日本在住40年。
京都大原に築100年の古民家と庭を手づくりで楽しみながら住まう。
1000年も続く英国貴族の血を引く。

DVDは、ベニシアさんの英国の故郷を廻る。
生まれ育ったダービシャー州にある貴族の館ケドルストン・ホールやフランスに近いジャージー島など。
貴族だった母親が次々に恋をしてその都度離婚結婚を重ねて移り住み、ベニシアさんたち子供も母に連れられて転々とする。
ケドルトン・ホールは現在従兄弟が第31代当主として継いでいるが、ナショナルトラストに管理をゆだね一部一般公開もしているようだ。いわゆるマナー・ハウスの上に位し正に貴族の館ホールである。

エッセイ本は、"父の思い出"とある。
まるで童話を読んでいるような気持ちになる。
母親が最初に結婚したのがベニシアさんのお父さん。
仕事をしたことのない大金持ちの息子。貴族ではない。
とても優しいひとだったが、ベニシアさんが2歳の時に両親は離婚。
それでも実の父とは会えることが多かった。
俳優になりたかった父だけあって、読んでくれる本は最高の語り口。
再婚してスイスに住む父の家を訪ねたり、父が母の再婚相手のジャージー島の家に滞在したりと。
父が42歳で突然の死を迎えた時、全寮制女学校の林で散歩中虫の知らせを感じた…。
奔放な母に振り回され、どうしようもない辛く切ない幼い日々の思い出だが、それが美しく童話のように綴られている。
"…自分が求めてきた平安が、自分の心の中にあることを知ったのです。"

そうしてベニシアさんが20歳そこそこで日本にたどり着き、日本の京都大原で手づくりの穏やかな愛しい家族らと暮らしを営んで40年になる。
穏やかな大人の童話だ。
 

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