『森と氷河と鯨』

トップ > 日記

読書日記

2022年4月15日

『森と氷河と鯨』 星野道夫 ほたるの本(世界文化社) 1800円+税

1996年43歳で、カムチャッカ半島の湖畔で、ヒグマに襲われ急逝した写真家の写真と文章の素晴らしい本である。
アラスカの大自然に魅せられ、移住し、そこに住んでいたインディアンたちの残した朽ち果てた住居跡や墓を知り、今に生き残る少ない故老を訪ねて、"ワタリガラス"の伝承を聴き訪ねた。また、大昔にアジアから、まだシベリアとアラスカがベーリンジアで陸続きだったころ、移り住んでいったであろうモンゴロイドたちに思いをはせてカムチャッカに出向き、その習性をよくよく知り多くの写真も近づいて撮っていた熊に、野営就眠中に襲われて命を落としたのだった。したがってこの本は未完で絶筆である。最後の襲われる8月8日までの日記が添付されている。
われわれ日本人と同胞であるかもしれないアラスカにあったはるか昔の人々の暮らしを思いを巡らし、アラスカの大地、大自然、天空の美しい写真にこころ洗われる。
最初、登場してくる人物の名前がボブやエスターなどと英語名で話し言葉も英語であるのに違和感を覚えたが、そこには抑圧され滅びゆく少数民族の悲しい歴史があるのだった。 

 

[前の日へのリンク]← 
→[次の日へのリンク]

NewChibaProject